新潟県村上市クリニックツアー報告

NPO法人・日本ホスピタリティ推進協会・ツーリズム部会は観光地活性化を地方色豊かな・おもてなし(ローカル・ホスピタリティ)で実現すること・・・を支援するのが設立された目的でその第一ステップは観光地の「おもてなし」の現状に関する診断調査(クリニック)です。そのために9月26日(日)と27日(月)の両日に行われた新潟県・村上市へのクリニックツアーには日本ホスピタリティ推進協会の橋本理事長をはじめ部会メンバー総勢22名が参加。
村上市は人口約3万人の城下町、東京から新潟へ上越新幹線で2時間、羽越線・特急「いなほ」に乗り換えて50分。
町の様子を一言で表現すれば、午後3時を過ぎると通りに人影が見えなくなる地方の町。小高い山が町の中央部にあり、昔はここに城があったというが、城下町といっても城跡はあるだけで城は復元されていない。
村上市の観光資源といえば、日本海に面し美しい夕日が自慢の瀬波温泉、市中を流れ秋に鮭が遡上する清流・三面川(みおもてがわ)である。皇太子妃・雅子様の本籍地として、当市が紹介され全国的に知名度があがったこともある。
また当市には市民推進「町おこし」催事がたくさんある。
観光客向けの催事としては毎年3月から1ヶ月間開催の「町屋の人形さま巡り」、9月10日から30日迄の「町屋の屏風まつり」、10月・体育の日、前後の土曜と日曜日の夜に催す「宵の竹灯篭まつり」など多彩だ。当地の町屋は京都の商家と同様に、江戸時代に道路に面した商家の間口の長さによって課税されたために、どこの町屋も狭い間口で奥行きが長い建物になっている。手前の道路側が店で奥が住宅という構造。こうした町屋のつくりを活用し「人形さま巡り」では70軒の町屋に先祖伝来の雛人形を飾る、「屏風まつり」には60軒ほどの町屋が家に伝わる自慢の屏風を飾り、訪れる観光客を住宅部分の座敷に招き入れて見物していただく。当主のお年寄りが由来や歴史、言い伝えを楽しそうに語ってくれる。こうした人と人のふれあいから遠来の観光客との交流がうまれ、年々リピーターが増加、二つの催事期間中の人出は10万人をこえ、その経済効果は5億円にも達するという。
「宵の竹灯篭まつり」は市内の小町黒塀通りに、竹筒を斜めに切って中にロウソクをともす竹の灯篭を4,000本ほど立て、夜をほのかに照らすという幻想的なシーンが出現する。通り面した料亭やお寺の庭など四つの会場では琴、尺八、ピアノなどを演奏し趣を添える。
この他にも市民が独自に推進する「黒塀プロジェクト」と「町屋の外観再生プロジェクト」がある。前者は、昔ながらの城下町の黒板塀の景観を復活させようと市民が黒板塀の板1枚1,000円を寄付し、取り付けも自分たちで行うもの、すでに150メートルが完成している。
後者の方は現在の商店の外観を昔の町屋の風情に再生しよう会員制のプロジェクトで、年会費は一般会員1口3,000円、法人会員1口10,000円、事業期間は04年から14年までの10年間、対象とする建物120軒という規模で進行中。市民以外でも会員になれます。
村上市には大正8年(1919年)から続いている200軒の露天がならび毎月2、7、12、17、22、27日の6回開催される朝市・六齋市(ろくさいいち)がある。
このように当市では一年中「いつでも」、「なにか」の催事が行われているという。
さて、村上市の地方色豊かな・おもてなし(ローカル・ホスピタリティ)診断結果の詳細をこの紙上にて記述することはできないがとくに目立ったことは、
1)訪れた町屋では、ご主人たちが、楽しそうに説明してくれる、見物客と会話が弾んでいる、
2)地元で栽培、加工された名産のお茶でご接待、さらに町の通りにはどこへいっても「ゴミ」がひとつも見当たらなかったことです。これらは一見「当り前のように」感じられますが、実はホスピタリティの大切な原点のひとつです。
今後の課題としては外国人観光客が増えることが予想されるので、英語、韓国語、中国語などで書かれた案内書の発行や誘導・表示看板などの設置でしょう。観光地おこし、町おこし、村おこしを考えている人々には地域おこしのモデルケースとしての村上市の訪問、見学をおすすめします。

詳しいことは下記へお尋ねください。
村上市観光協会 電話 0254-53-2111
ホームページアドレス http://www.mu-cci.or.jp/kanko/

JHMA常任理事 ツーリズム部会 阿部 則之