吉祥グループ

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おもてなし規格認証2018 取得企業インタビュー

吉祥グループ

神戸牛だけを取り扱う専門店として2008年の設立以降、ステーキ・しゃぶしゃぶ・すき焼きなど業態を拡げ、現在グループ4社・28店舗を展開する吉祥グループ。おもてなし規格認証の取得を機に、JHMAの認定資格制度を活用した従業員教育と現場の改善活動の両輪を回し、お客様満足度の向上に真摯に取り組まれている。同社・トレーニング部責任者の橋本峻氏にお話を伺った。

(取材:角 俊英)

おもてなし規格認証を取得しようと思われた動機をお聞かせください。

取得を目指した理由として、社内の仕組み作りに活用したいという狙いがありました。神戸牛はそれだけでも非常に強いネームバリューがあり、有難いことに連日多くのお客様にいらして頂けます。ですが、お店側が受け身でいたとしてもお客様が来て下さるので、その有難みが風化してしまっているように感じておりました。もし、神戸牛がなくなったり、新しい事業展開を進めていく時に「これまでは神戸牛があったからお客様に支持されていたのだ」と後で気が付いて反省するより、「お客様にご満足頂けるお店が、お肉は神戸牛だった」とお客様に思って頂けるようにホスピタリティを追及していきたいと思っていました。そういった時に、おもてなし規格認証のことを知り、サービスの“見える化”という部分が面白く、応募することにしたのです。

トレーニング部責任者 橋本 氏

そういった時に、おもてなし規格認証のことを知り、サービスの“見える化”という部分が面白く、応募することにしたのです。

ホスピタリティを強みにするために、どのような取り組みをされていますか?

お客様への観察・共感・提案の部分を大切にしています。当社は最低限、基本的な接客マニュアルは用意しておりますが、それ以上のマニュアルはありません。スタッフには「基本以上のことは、お客様をよく見て、自分で判断するように」と伝えています。例えば、お客様がキャリーバッグをお持ちかどうか、ご家族連れかカップルか、ご旅行の方か地元のお客様かといったことを判断しながら対応を変えていきます。

ご旅行の方であれば、おしぼりを渡す際、「ご来店ありがとうございます」という言葉の後に「本日はもしかして遠方からお越しなのですか?」とお声かけをして、写真を撮って差し上げたり、神戸牛のお話をさせて頂いております。車椅子をご利用のお客様には、今までは車椅子を避けて「こちらへどうぞ」という声がけをしていましたが、「何かこちらでお手伝いできることはありませんか?」という言い方に変えて、とても喜んで頂いています。妊娠中のお客様にも同じように声かけをして喜ばれています。

マニュアルに載せ、徹底していることはお水や薬味のお代わりのお声かけ、また、退店時にはお客様の目を見て7歩お店の外まで出てお見送りをすることです。お見送りは、たとえ本人が担当していなかったお客様でも誰かがきちんとお辞儀をすることをお願いしています。本部のメンバーやエリアマネージャー陣が発信し続け、店長陣までやっと落ちてきたかなと思っています。

お召し上がり証明書

他方、神戸でもインバウンドのお客様は着実に増えてきており、海外のお客様への接客についても少しずつ取り組みを深めています。現在は、中国とネパール出身のスタッフがおり、グループの店舗を元町・神戸北・神戸南の3エリアに分けて毎日必ず巡回し、海外からのお客様の通訳をしています。通訳をしながら、神戸牛についての正確な情報をお伝えしたり、神戸牛をお召し上がり頂いた証明書を作ってお客様にプレゼントしたりしています。

お客様がすぐにツイッターやインスタグラムに上げて下さるので、自然と口コミが広がっています。また、「次回は、ご予約いただければ私が赴く事ができますし、同じチームの者が出向くこともできます。ぜひご利用ください。」と名刺を渡し、リピーター獲得活動もしています。

MS&C社のミステリーショッピングリサーチ(覆面調査)やカスタマーリサーチも、お取り組みを支えるツールの一つになっているとお聞きしました。

ミステリーショッピングリサーチやカスタマーリサーチでは、実際にスタッフが「本日のお食事はいかがでしたか?」と問いかけても出てこないお客様の本音、「もう少し(料理を)早く出してほしかった」や「思っていた神戸牛と違った。」といったお声を数値やコメントで可視化できて、スタッフたちが考えるツールとして大変役に立っています。

近隣で100mも離れていない鉄板焼きの2店舗があったのですが、一つの店舗は料理提供の満足度が70%以上、“感動”の結果を頂いているにも関わらず、もう1つの店舗は30%位しか頂いていませんでした。提供時間は同じくらいだったのですが、調べていくうちに「タイミングの問題なのでは?」という仮説に辿り着きました。

満足度が30%の店舗では、お客様が「この後、南京町まで行くんです」とお話されていたら「早く料理を提供しなければ!」と思い「サラダです」「お肉です。焼いてよろしいですか?」といった調子で、お肉を焼きながら「ご飯をお持ちしますね」とテンポよく料理を提供し、お帰り頂いておりました。満足度が70%以上の店舗は、テンポがよいわけではないのですが、神戸牛の説明をしてからそのお肉を焼いて提供する、野菜の提供時も「こういう理由で、このお野菜を最初に焼きます」「お肉はその間に寝かせますので、もう少しお腹の準備をしてお待ちくださいね」というようなコミュニケーションを取っていました。こうしたことから、私共のスタイルでは料理提供の満足度は、時間ではなくタイミングや雰囲気によるのではないかと考え、提供満足度の低い店舗が高い店の取り組みを真似することで30%台から一気に60%台まで改善しました。

マニュアルがないからこそ、お客様の声を可視化する仕組みを活用して、スタッフが考え、行動を変える機会を創り、それが結果として、お客様の満足度を上げるだけでなく、店舗、スタッフの成長にも繋がっていると思います。

認証の取得を通じて得られたメリットはどのようなことでしょうか?

神戸牛コンシェルジュ

神戸牛のブランドは確かに強いのですが、「1,500円で食べたい」というお客様にも、見せ方や伝え方によって 3,000円、5,000円とセールスアップすることができます。神戸牛の名に乗っかるのではなく、自社独自のブランドを高めたいという思いもありました。取得を目指して活動をしていると、今まで売上や利益が最優先だったメンバーが「お客様への声かけをしっかりしよう」「お出迎え・お見送りをしっかりしよう」とメンバー同士声をかけてくれるようになり、同じ方向を向いてくれるようになりました。

また、昨年秋に誕生した「神戸牛コンシェルジュデスク」の部署、「神戸牛コンシェルジュ」という役職は、この認証取得が大きな地位向上に繋がりました。それまでもメンバーは個々に活躍してくれていたのですが、「おもてなし規格認証を取得するために!」という“意識”を皆で持つことで、目指す所や役割を再確認し、皆のモチベーションアップ、そして、吉祥グループの理念など大切にしたいことを改めて現場に根付かせるきっかけになりました。
デスクには複数の国籍のコンシェルジュがいて、弊社グループ店だけではなく他ブランドのお店や神戸市内の観光についてもご案内しています。彼らの教育のために、神戸出身のスタッフやHC、AHC(※)メンバーが中心となって神戸の魅力や歴史を伝える研修カリキュラムも整えました。「お客様の神戸で物語を作るお手伝いができれば」と立ち上げた取り組みなので、私共が“地元”として見る神戸の街と、他の地域からいらしたお客様が“観光地”として捉える神戸の街の違い、視点や印象などの違いを日々の接客やアンケート結果などからも洗い出して、神戸の魅力を色々な角度からお伝えできるように努めております。


吉祥グループでは、2018年6月に紺認証を1店、金認証を3店で取得後、9月に新たに紺認証を3店で取得。橋本氏は個々の店舗の状況や課題と照らしながら、数店舗ずつ取り組みに巻き込み、少人数での教育を実施、店舗の改善活動を続けられている。

※HCはJHMA認定ホスピタリティ・コーディネータの略、AHCはJHMA認定アソシエイト・ホスピタリティ・コーディネータの略。


今後も認証を取得された事業所の方のお声をご紹介していきますので、ぜひご覧ください。