株式会社東京ドーム
おもてなし規格認証2020 紺認証取得企業インタビュー
接客力を上げる仕組みづくりで紺認証取得
さらなる高みを目指した取り組み
株式会社東京ドーム アミューズメント部
東京ドームシティアトラクションズ
株式会社東京ドームが運営する、人気の都市型遊園地・東京ドームシティ アトラクションズは、経済産業省が創設した「おもてなし規格認証」において、2020年度「★★(紺認証)」(以下、紺認証)を取得した。今回は、同社アミューズメント部、教育・安全グループの総括主任・鈴木智忠氏と、同じく教育・安全グループの関根麻友氏に、紺認証取得について、その経緯や背景を伺った。
※記載されている会社概要や肩書き、数値や固有名詞などは取材当時のものです。
(取材:渋谷 行秀・佐藤 芙美花)
おもてなし規格認証取得のきっかけを教えてください。
鈴木氏:もともと、CS(顧客満足度)向上の活動にはずっと取り組んでいたのですが、来場されたお客さまお一人おひとりの満足というものは、はっきりと目に見えるものではありません。たとえば、安全に対する取り組みには事故や怪我を起こさない、というはっきりとした指標があります。そういう状況の中でCS向上という部分でも指標となるものを探していたところ、おもてなし規格認証と出会いました。
おもてなし規格認証の紺認証は、レベルの高いスタッフがいることが評価されるのではなく、組織やマネジメント力など30項目とインバウンド対応に関する10項目、合計40項目の多岐に亘った評価基準があります。その評価基準を指標とすることに対して納得感を持てたことが、取得を目指すことを決めたきっかけです。
紺認証の取得に取り組む以前から、MSRを導入されていましたが。
関根氏:当初はMS&Consultingさん(以下、MS&C社)ではなく、他社の覆面調査を導入していました。しかし、その内容が点数にばかりフォーカスされていて、結果をどう現場に活かしていくのかなどのサポートが受けられず、調査だけで終わってしまっていたのです。その環境に不満を覚えていた頃に弊社の流通事業部がMS&C社のサービスを利用していることを知り、うちも変えてみようということで導入しました。
今までは自分たちの弱い部分、マイナスな面にばかり目を向け、それを根性論で改善していくような取り組み方だったのですが、導入後は強みを伸ばし、磨いていくというポジティブな考え方に変わっていったのが衝撃的でした。特に「輝いているスタッフ」によって、社内にも褒める文化が醸成されてきていると思います。今までになかったことなので、本当にお願いしてよかったです。
鈴木氏:CS向上委員会というものが部署内にあるのですが、以前はその会議もとても暗かったのです。お客様からのお叱りの声を追求される、怒られる、という雰囲気で。でも、それも大きく変わり、ミステリーショッピングリサーチ(MSR)の活動報告や従業員満足度を上げるための取り組みになってきています。
CS向上委員会の取り組みについて教えてください。
鈴木氏:MS&C社にお願いするタイミングと同時期に、CS向上委員会で「Step→S!」という方針を打ち出しました。このStep→S!とは、「Support」「Tenderness」「Enjoyment」「Performance」の頭文字をとったもので、個人の能力差に関係なく、誰もが実行できるような仕組みでCSの向上を目指す取り組みです。たとえば、お誕生日のお客さまへお誕生日シールを提供し、貼っていただくことで、乗り場のスタッフが「お誕生日おめでとうございます」と自然にお声掛けできる仕組みなどがそうです。
このStep→S!の中でも特にサポートとテンダネスを実現できる仕組みを整備していこうということになり、それがMS&C社へお願いする流れとリンクしました。さらにこのことが、個人のスキルよりも接客力を向上させる土台に重きを置いて審査するという、おもてなし規格認証への挑戦にもつながっていったということです。
部署内でのホスピタリティに関して、どのような取り組みがありますか?
関根氏:アルバイトトレーナーといって、約350名いるオペレーターを指導するトレーナー制度があります。トレーナーになるための条件として、入社1年程度の経験と、エリアの上司からの推薦を受けてチャレンジをする仕組みです。トレーナーに挑戦していく過程で「現場を良くしていきたい」という思いを強く持つようになり、それがホスピタリティへのモチベーションの高さにつながっているのだと思います。
また、紺認証取得への取り組みの中で人材研修プログラムを受講したのですが、受けたメンバーの意識が非常に高くなり、ホスピタリティに対する知識も深くなったと感じます。
安全に対しても非常に厳しく取り組まれていますね。
鈴木氏:2011年1月の事故をきっかけに、すべての安全に関する取り組みを見直しました。取り組みを仕組み化したことは大きな変化でした。経営理念とは別に安全理念を作り、そこから派生して20の規定マニュアルという仕組みを作成。マニュアルを作るマニュアルとして、運用条件を明確にしたのです。さらに、年に1度は規定・マニュアルに沿った運営が行われているかの総点検を義務づけています。事故を振り返る機会ということで非常に大きな意味を持つと思っています。今年は、事故当時のことを知る社員によって、事故発生前後の話を聞く機会を設けるなど、安全意識をさらに醸成させる取り組みを行いました。それに加えて監査チームを作り、ゾーンの安全チェックや、オペレーションがマニュアルと相違ないかモニタリングするなどの取り組みも行っています。
紺認証を取得したことでどのようなメリットがあったとお考えですか?
鈴木氏:取得して嬉しいというよりも、一部評価項目でC評価をいただいたことで次への改善目標が見えたことが大きいように思います。具体的には、まず従業員満足度の評価ができていなかったこと。今までそこを把握しないまま手当たり次第に施策をしてきたということがわかったので、早速、従業員満足度の見える化に着手しています。
紺認証で満足することなく、さらなる高みを目指して、より一層の意気込みでCS向上に取り組んでいきたいですね。
今後も認証を取得された事業所の方のお声をご紹介していきますので、ぜひご覧ください。