『受賞者に心からのありがとう』
「はたして受賞者はどんな人なのか?」。当然のことながら、受賞式に出席した人の関心はその一点に集中していたことでしょう。受賞作をすでに読んでいる人、読んでいない人の違いはあるものの。
優秀賞の受賞作は、ご主人を亡くし、お子さんと暮らす女性からのもので、喪失によって改めて知る平凡な日常のなかの幸福感、について書かれた作品です。文章からは、ご主人の記憶がまだ鮮明な様子がうかがえ、別離からさほど時がたっていないように思えます。
佳作の受賞作は、長い間看病をしている寝たきりのおばの穏やかな人間性を書き上げた作品です。奇しくも当日出席できた受賞者の二作品とも、人生の一面を教えてくれた身近な人へ、「ありがとう」を言うものになりました。
作品をすでに読んでいたわたしは、受賞者のおふたりとも肝っ玉母さんのような方ではないかと想像していました。肝っ玉母さんを演じた、京塚昌子さんばりのふくよかな体型、丸顔で笑いじわが愛らしいくて…と、そんな想像までしていました。というのも、両作品ともつらく悲しい出来事を書いていながら、その事実にぺしゃんこになることもなく、真正面から受け止めてすっくと立っている力強さと明るさを持っていたからです。
そして……式に出席された皆様はご存知のとおりのおふたりでした。
わたしの想像は半分はまんまと当たり、半分はまんまと裏切られました。授賞式で、司会の深谷さんの問いかけに応じ、受賞の感想を述べ、作品を朗読した姿は実に堂々として肝っ玉がしっかりと座っていましたが、おふたりともほっそりと柳のようにスマートな女性でした。
今回の作品募集に応募してくださり、授賞式に出席いただき、ほんとうにありがとうございました。
また、当日の式にご参加いただいた皆様、広報部会の不備を陰で支えてくださった総務部会や事務局をはじめ各部会の皆様、司会をしてくださった深谷さん、そしてなにより会場をご提供いただいた東條さん、皆様に心からのありがとうを言わせていただきます。
出版広報部会長 羽山 茂樹